『パラサイト 半地下の家族』は2019年の韓国映画です。監督は『グエムル-漢江の怪物-』などで知られるポン・ジュノ。
彼の作品ではお馴染みのソン・ガンホが主演を務めました。
第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、韓国映画としては初のパルムドール(最高賞)を獲得。
さらに米国アカデミー賞でも作品賞のほか6部門にノミネートされ、アカデミー賞を受賞した作品です。
ポン・ジュノといえば、社会派の作風で知られる監督です。
そのスタイルは本作『パラサイト』でも一貫しており、韓国が抱える格差社会の構図をシニカルに描き出しました。
大衆的なコメディの外観を呈しながらも、次第にサイコホラーの雰囲気を帯びてくるストーリーは、観客に得も言われぬ衝撃を与えてくれます。
普段はあまり韓国映画に興味がないという方も、ぜひこの機会に観てほしい傑作です。
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目次
映画『パラサイト 半地下の家族』の原作
『パラサイト』のアイデアはポン・ジュノ監督自身の体験から生まれました。
アカデミー賞『パラサイト 半地下の家族』の監督ポン・ジュノとは?経歴や代表作を一挙紹介
20代の頃、彼はソウルで家庭教師の職に就いたことがあるといいます。
現在の妻でもあるガールフレンドからの紹介で、とある家庭の息子に数学を教えることになったのです。
ポン自身は非常に貧しい家庭の生まれでしたが、足を運ぶことになったのは高級住宅街の一画にたたずむ豪邸。
しかも数学が苦手であったにもかかわらず、彼はガールフレンドから信頼の置ける友人として推薦されたといいます。
その時の困惑した経験が、2013年、『スノーピアサー』を撮影中の彼に着想を与えたのでした。
『パラサイト 半地下の家族』のキャスト一覧
キム・ギテク/ソン・ガンホ
半地下のアパートに暮らすキム家の主人。
ちなみに彼ら家族4人は全員失業中であり、デリバリー・ピザの箱を組み立てる内職で生計を立てています。
貧しいなかでも楽観的な性格をしており、それどころか能天気で向こう見ずな一面も。
過去にタクシー運転手をしていたらしく、身分を偽ってパク家のお抱え運転手となります。
キム・チュンスク/チャン・ヘジン
ギテクの妻。かつてはハンマー投げの選手だったようで、部屋にはその時のメダルが大事に飾られています。
普段は能天気な夫をたしなめる役まわりですが、彼女もまた正体を隠し、家政婦としてパク家に上がり込むことになります。
キム・ギウ/チェ・ウシク
ギテクの息子。大学受験に何度も失敗しているようで、その叶わぬ実力は家族から「受験のプロ」と呼ばれるほど。
留学で不在となる友人の代わりに、パク家の家庭教師として雇われ、その一人娘ダヘに受験勉強を教えることになります。
頭がよく回るらしく、彼の企みが発端となって事態は思わぬ展開を見せていくことに。
キム・ギジョン/パク・ソダム
ギテクの娘。美大への進学を目指しているようだが、いまだ予備校に通うことができていません。
家庭教師となったギウから友人の友人として紹介され、パク家の息子、ダソンの絵の先生となります。
パク・ドンイク/イ・ソンギュン
高台の豪邸に住むパク家の主人。IT企業の若き経営者で、良識のある人物として描かれます。
専属運転手となったギテクに対しても折り目正しい態度を取っていますが、「一線」を超えた関係は望んでいない様子。
パク・ヨンギョ/チョ・ヨジョン
ドンイクの妻。若さと美貌を備えていますが、どこか間の抜けた印象も受ける女性です。
特に息子のダソンのことを心配しているらしく、その先生となったギジョンには全幅の信頼を置いているようです。
パク・ダヘ/チョン・ジソ
ドンイクの娘。高校2年生で思春期の真っただ中。家庭教師となったギウに恋心を抱くようになります。
パク・ダソン/チョン・ヒョンジュン
ドンイクの息子。感性豊かで落ち着きのない性格らしく、しばしば突飛な行動をとって両親を心配させます。
映画『パラサイト 半地下の家族』の主題歌紹介
音楽を担当したのはチェン・ジェイル。映画や演劇、ポップミュージックなど幅広い分野で活躍している音楽家です。
ポン・ジュノ監督作品の『オクジャ』(2017年)でも音楽を手掛けました。
ちなみに、すでに映画を観た方なら、作中でギジョンが口ずさんでいた歌を覚えていることでしょう。
「ジェシカ、一人っ子、イリノイ州シカゴ、クラスメイトはキム・ジンモで…」
彼女が扮する架空の先生「ジェシカ」の設定を覚えるために復唱していたこの歌、どうやら気になった人も多いようで、公開からSNSを中心に話題となっています。
これには公式も便乗したようで、英語版サイトではオリジナル音源も配布されることに。
しかも丁寧にDTM用音源まで用意されており、どうぞリミックスを作ってくれと言わんばかり。
すでに有志によって複数のバージョンが公開されているので、気になった方は検索してみてください。
ちなみに、元ネタはチョン・グァンテによる1982年の歌「独島は我が領土」。韓国人なら誰もが知っている曲の替え歌だったというわけです。
『パラサイト 半地下の家族』のあらすじ
貧しいキム一家の計略とは
主人公はアパートの半地下に暮らすキム一家。
主のギテクに妻のチュンスク、長男のギウ、長女のギジョンの4人全員が失業中という、非常に貧しい生活を送っていました。
そんあある日、長男のギウのもとに家庭教師の職に就けるチャンスが舞い込んできます。
しかも訪問する先は、IT社長パク・ドンイクの豪邸。頭の回るギウは自身を大学生と偽り、ドンイクの娘であるダヘの勉強を教えることになります。
こうして無事に職を得たギウでしたが、味をしめた彼はさらに企みを巡らせます。彼はパク家の息子であるダソンの美術教師として、妹のギジョンを紹介したのです。
もちろん2人が兄妹である事実は秘密。ギジョンはアメリカ帰りの「ジェシカ先生」としてパク家に上がり込むことになります。
さらにキム一家の計画はエスカレートしていきます。
パク家のお抱え運転手を罠にかけクビにさせると、その後任としてギテクを紹介。同じように家政婦も退職に追い込むと、後釜としてチュンスクを雇わせます。
いまやギテクたちキム家族はこの裕福な家に寄生していました。もちろん、その事実をパク一家の者たちは知りません。
やがて、事態は思わぬ展開を見せることになります。
パク一家の豪邸の地下には
とある休日、パク一家は家族そろってキャンプへ出かけることになります。主人たちがいなくなった豪邸では、ギテクたち4人が酒池肉林の大騒ぎ。
そこに突然インターホンの音が鳴り響きます。訪問者は、4人によって職を追われた前任の家政婦でした。
「忘れ物をしてしまった」と話す彼女は、家に上がり込むやいなや、ギテクたちも知らない地下の隠し扉を開けてみせます。
階段を降りた先に広がっていたのは、北の核攻撃に備えるための隠しシェルターでした。そして通路の奥には、見たこともない男の姿があったのです。
彼は家政婦の夫であり、借金の取り立てから逃げるため、何年ものあいだパク家の地下に身を隠していたのでした。
このことは秘密にしてほしいと懇願する家政婦でしたが、ふとした拍子にギテクたち4人が家族である事実を知ってしまいます。
お互いに相手の秘密を暴露すると脅し、両家族入り乱れての殴り合いが始まりました。
ところがその時、雨でキャンプが中止となったパク家族は、帰宅の途についていたのです。
こうして物語は悲劇的な結末へと向かっていくのでした。
『パラサイト 半地下の家族』感想と見所
韓国映画のブレイクスルー
カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『パラサイト』。
これまでも世界的な評価を受けてきたポン・ジュノ監督ですが、今回の受賞でその地位を不動のものにしたと言えます。
それと同時に、今回の快挙は韓国映画界においても嬉しいニュースとなりました。
もちろん、これまでも多くの韓国人監督が世界に名をとどろかせてきました
たとえば、パク・チャヌク監督『渇き』(2009年)はカンヌ国際映画祭で審査員賞を、キム・ギドク監督『嘆きのピエタ』(2012年)はベネツィア国際映画祭で金獅子賞を、それぞれ獲得しています。
しかし本作の白眉たる点は、それが高い芸術性と大衆性を両立させていることにあります。
ブラックコメディとして楽しめる作品でありながら、根底にあるテーマが社会の本質を深く抉り取っているのです。
日本での上映数を見ても分かるように、批評的にも興行的にも成功を収めたといえる本作は、まさに韓国映画にとってのブレイクスルーを果たしたといえるでしょう。
映画が浮き彫りにする格差社会
方々で言われているように、『パラサイト 半地下の家族』は格差社会を主題とした作品です。
登場人物のひとりであるギウは、韓国が「警備員1人の採用枠に500人が殺到する」ような社会であることを嘆きます。
その格差は、日本とは比べ物にならないかもしれません。
裕福なパク一家と、貧しいキム一家。両者の差異は、カメラワークから細部の造形に至るまで、分かりやすいほど対称的に描かれていると言えるでしょう。
とはいえこの映画は、貧しい者が富める者に反撃を与える、といった単純な二項対立の物語ではありません。
すでに鑑賞した方は、予想外の展開にハッとさせられたはず。主人公たちとは別に、もうひとつの家族が貧困の象徴として登場することになるのです。
その時、邦題にもなっている「半地下」の意味が誰の目にも明らかとなるでしょう。現実の貧困とは複層的に入り組んでいるのであり、それゆえに解決が困難なものなのです。
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